光のもとでⅡ
 不満があるとしたら、ツカサの器用さに、だろうか。
 ツカサは私の勉強を見ながら長ランとハチマキの刺繍をしている。その手先の器用なことといったら、自分が女の子であることを恥ずかしく思うレベルだった。
「なんでそんなに不満そうな目?」
「……だって、悔しいくらいにきれいなんだもの」
「翠のは?」
「見せたくない」
「どっちにしろ俺はそれを着なくちゃいけないんだけど」
「…………」
「そんなにひどいの?」
 真面目に心配されている気がして、おずおずと生地を差し出した。
 ツカサの縫っているものと比べると、やはり粗が目立つ。
 そんな状況にむーむー唸っていると、
「そんなにひどいとは思わないけど?」
 つまり、上手ではないと言いたいのか。
「お裁縫は苦手なのっ」
 ぷい、とそっぽを向くと、ツカサがくつくつと笑いだした。
「細かい作業は得意なのかと思ってた」
「バッグ作りは好きだけど、それだってミシンでダダダと縫えるものに限るし、刺繍なんて学校の授業で習って以来一度もやったことないんだから」
「意外だな。だって、編み物はするんだろ?」
「……編み物のほうが糸が太いし、針だって指に刺さることないもの……」
< 791 / 1,333 >

この作品をシェア

pagetop