光のもとでⅡ
「久しぶり……」
 若干気まずそうに翠が口にした。けれど、
「……テスト振りなだけだけど」
 テストが終わってから丸一週間。久しぶりと言うには短すぎる日数。
 とくに何を思うでもなく返したつもりだった。けれど、翠の表情は曇る。
「これから部活、だよね」
「そうだけど」
「がんばってね」
 いつもなら目を見て話す翠が一度も俺の目を見なかった。それどころか泣きそうな顔で、今すぐ立ち去ろうとしているのが理解できない。
 脇をすり抜けようとした翠の前に出て道を塞ぐ。
「泣きそうな顔されるのも、毎日ここにいるのもわけがわからないんだけど」
「っ……ここにいたのは人間ウォッチング。ただ、人の往来を見ていただけ」
「毎日毎日飽きもせず?」
「そう、悪いっ!?」
「悪いとは言ってない。泣きそうな理由は?」
「黙秘っ」
 立ちはだかってもなお進もうとするから腕を掴んだ。
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