光のもとでⅡ
 谷崎さんは佐野くんに向き直り、
「ご心配いただかなくても結構です。部活でパートナーを組んでいる青木くんが同じクラスにいますので。……私たちのことよりご自分の心配をされてはいかがですか? ダンス未経験、さらには授業にも出ていない御園生先輩と踊るんですから」
 これは悪気があったのかなかったのか……。
 どちらにしても、カチンとくる返答だったことに変わりはない。
 ゆえに、佐野くんが珍しく怒りに歪んだ表情を見せている。
「谷崎さん、今のは失礼よ」
 静音先輩の言葉に、谷崎さんは小さく「すみません」と口にしてそっぽを向いた。
 暗雲立ち込める、とはこういうことを言うのだろうか。
 ただでさえあまりいい雰囲気ではなかったところ、さらに険悪さが増したように思う。
 そんな空気を換えるべく、風間先輩が周囲に向かって声を発した。
「みんな、気になって練習どころじゃねーんだろ? ならさ、もう集まっちゃえよ。どっちにしろ、最終的には多数決することになる」
 風間先輩の掛け声に散らばっていた人が集まり始めた。
「今からワルツに出る代表を再選出することになった。ほかに我こそは、って人間いる? これがホントのホント、最後だよ」
 あたりを見回しても手が挙がる気配はない。
「じゃ、これから踊るから、それを見て自分の中で順位決めといて。ダンスが終わったら三学年合同で多数決とるから」
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