光のもとでⅡ
 私たちは体育館の隅に場所を移し、練習風景をぼーっと眺めていた。
 自分たちが選出されたことを喜びはしたものの、「後味がいいか悪いか」と訊かれたら、間違っても「いい」と答えることはできない。
 きっと、ほかのメンバーも多かれ少なかれ同じようなことを考えているのではないだろうか。だから、誰も口を開かない。そんな気がした。
 それでも、明日には気持ちを入れ替えてワルツに臨まなくてはならない。
 それを意識すればするほどに、「今更」感が強くなる。
 もっと早くに申し出てくれていたなら、こんな土壇場でどうこうすることはなかったのだ。
 ただその場合、間違いなく私と佐野くんのふたりが選考から漏れただろう。
 二ヶ月間という練習期間があったからこそ、ここに残ることができたに過ぎない。
 どうしたらこの気持ちを切り替えて明日のワルツに挑めるか――。
 そんなことを考えていたとき、風間先輩が口火を切った。
「やっぱ、佐野くんと御園生さんには謝るべきかな」
「は? なんで風間先輩が俺たちに謝るんですか?」
「ん~……一応全体集会で承認を得てワルツメンバーに決まったわけだけど、『姫』を持ち出したらこういうことが起きるであろうことは予測できたわけで……。それでも、俺たち三年は御園生さんを担ぎ出すことをやめなかった。いわば、三年の陰謀ってやつだよね」
 何を言われたのか理解することができず佐野くんや海斗くんに視線をめぐらせたけれど、誰の顔を見ても不思議そうな表情をしていた。
「最初から話すとちょっと長くなるんだけど、四十分もあることだしのんびり聞いてよ」
 そんな前置きをすると、風間先輩は胡坐を崩して話し始めた。
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