光のもとでⅡ
「そんなわけで、『姫』を引っ張り出せば谷崎サンが突っかかってくることはある程度予測できてたんだよね。にもかかわらず、回避してあげらんなくてごめん」
 風間先輩は顔の前で両手を合わせて頭を下げた。
「わわわっ、そんなっ、やめてくださいっ」
 慌てる私の隣で、「あの、質問いいっすか?」と佐野くんが手を挙げ口を挟んだ。
「ワルツの代表が姫と王子の恒例っていうのは理解したんですけど、組内で面倒が起こる予測までできててなんで御園生を推したんですか? それと、さっき簾条が言ってたやつ。わかってて藤宮先輩を引っ張り出したって何?」
 確かに、揉め事が起こるとわかっていて私を推す理由もわからなければ、ツカサを引っ張り出すというそれも気にかかる。
 答えを求めて風間先輩を見ると、
「主な謝罪はそっちかな?」
 え……?
「なんで三年が御園生さんを担ぎ出そうとしたのか。ことの発端はそこ」
 まるで「単純明快」というように口にされたけれど、それだけでは私と佐野くんには理解ができなかった。けれど、海斗くんには理解ができたようだ。
「もしかして、ターゲットは司だったって話です?」
 海斗くんの言葉に風間先輩はニヤリと笑みを深めて応える。
「藤宮がペース乱すのって御園生さんが絡んだときのみじゃん? 願わくば、去年の紅葉祭のときみたいな藤宮をもう一度拝みたくってさ」
 風間先輩は悪そうな笑みを貼り付けたまま先を続ける。
「御園生さんがうちの代表になるのと同じ道理で藤宮も黒組の代表になるだろ? ってことはさ、藤宮も当日同じフロアで別のパートナーと踊るわけだよ。ただでさえ御園生さん以外の女子と踊りたくないと思っているところに、御園生さんも自分以外の男と踊るわけで、そんな状況じゃ笑顔でなんて踊れねぇって。去年の紅葉祭を前提に鑑みれば、間違いなく不機嫌オーラ全開で踊ることになるだろ? さらには、授業でダンスを習っていない御園生さんの手ほどきをほかの男に任せるとも思えない。藤宮なら間違いなく自分が教える。そこへきて、うちの組に危険分子がいるとわかれば御園生さんが困る事態にはならない策を施す。つまり、誰も文句が言えないレベルにまで御園生さんのダンスを仕上げる。それってさ、どこをとってもうちの組にはプラスでしかないからね」
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