光のもとでⅡ
「起こりうるトラブルのひとつとして、くらいの認識です」
「さすがは女帝」
「お褒めに与り光栄です。……でも、こうなることを見越してあの男を引っ張りだした風間先輩のほうが上手かと存じます」
「あれ? そこまでばれてた?」
「えぇ。私、目ざといので」
 にこりと微笑んだ桃華さんは表情を変えて海斗くんを見やる。その視線たるや、呆れ以外のものを含んではいなかった。
「海斗、私たちが中等部二年のときの姫を忘れたの?」
 桃華さんのその言葉に海斗くんは、「ああっ!」と大きな声を挙げた。
「そっか……谷崎さんって茜先輩のあとに姫になった子か!」
 海斗くんの様子に風間先輩がくつくつと笑い出す。
「ひっでー思い出し方。仮にも姫になった子だぞ?」
「だって……あの年一年限りだったしあまりインパクトなかったし……」
 その言葉に桃華さんと風間先輩が苦笑を漏らす。
「まぁな、俺らの代が中等部に上がってから二年間は茜先輩と藤宮がセットで姫と王子だったし、茜先輩が卒業してあえなく姫の代替わり、って感じだったからな。さらには御園生さんと海斗が谷崎サンのことを認知してなかったってことは、今年の姫が選ばれる際には候補に挙がりさえしなかったんじゃないの?」
「当たりです。候補者は翠葉を含めてふたりいましたけど、残念ながら谷崎さんではありませんでした」
 話を聞いてうな垂れていると、佐野くんがポンポンと背中を叩き慰めてくれた。
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