光のもとでⅡ
 そんな私を風間先輩はくつくつと笑い、
「もっとも、ちょっと前までのツンと澄ました藤宮には興味なんてなかったけどね」
「じゃ、どうして……?」
 今だって愛想がいいとは言えないし、ツンと澄ました表情はデフォルトだ。
「あいつ、変わったじゃん。御園生さんとかかわるようになって表情豊かになったし、人ともそこそこ話すようになった。そういうの見てたらどんなやつなのかな、って思うようになったし、俺、頭が切れる人間は基本的に好きなんだ」
 そんなふうに話す風間先輩を見て、海斗くんと桃華さんは微妙な表情をしている。桃華さんにいたっては「奇特な人」もしくは「ご愁傷様」というような表情に思えてならない。
 そんな視線に気づかないのか、
「あとはこの先の進路も同じだから、っていうのもあるかもな」
 え……? それはつまり……。
「風間先輩も藤宮の医学部を受けられるんですか?」
「そっ。俺んちも病院なの。だから医者になることは決まってて、どの大学に行くかちょっと悩んでたんだけど、結果的に藤宮に進むことにしたからさ。ま、俺は藤宮ほど成績良くないから普通の推薦入試だけどね。藤宮はAO入試だか指定校推薦入試って聞いたけど……?」
 私は今日二回目の戸惑いを感じていた。
 ツカサが藤宮の医学部を受けることは知っていた。でも、AO入試とか指定校推薦入試とかそういった具体的なことは何も知らないのだ。
 やっぱり、会話が少なすぎるのかな……。それとも、ツカサが意図して詳しく話してないだけなのかな……。
 そんなことを考えている間に時計は七時を指していた。
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