光のもとでⅡ
 風間先輩の号令で三学年が集まり、明日への意気込みを口にして解散。
 人が全員出るまで待っていたけれど、静音先輩と谷崎さんが戻ってくることはなかった。
「翠葉、気にしても仕方のないこともあるわ」
「そうだよ。翠葉ちゃん悪いことしてないし」
「ダンス対決までして獲得した代表権なんだから、明日はがんばってよね」
 桃華さんと美乃里さん、香月さんに次々と声をかけられ、
「うん、そうだね。明日もがんばるよ」
 そんなふうに応えはしたけれど、たぶんものすごく頼りない表情をしていただろう。
 申し訳なさを感じていると、
「御園生さん、ちょっといい?」
 風間先輩に呼び止められ、桃華さんたちとはその場で別れた。
 人のいなくなった小体育館には風間先輩と私のふたりだけ。
 風間先輩は少し言いづらそうな表情をしたけれど、口を開くときには真正面から私を見ていた。
「さっき俺、谷崎さんの申し出を受ける受けないは御園生さんの好きにしていいよって言ったじゃん?」
「はい……」
「それはさ、静音が認めるだけの実力を持っていたからっていうのもあるけど、御園生さん自身に谷崎さんを突っぱねるだけの気概を持って挑んでほしいと思ってたからなんだよね」
 ストレートすぎる言葉に私は一瞬で緊張状態に陥った。
 唾をゴクリと飲み込むと、
「御園生さんはそれだけの努力をしてきたでしょ? そういうの、自信にしていいと思うよ」
 風間先輩の言葉が頭の中でリフレインする。
 自信にして、いい……?
「もう何も起こらないと思いたいけど、それだって確実じゃない。明日、谷崎さんが何もアクションを起こさないなんて保証はどこにもないんだ。でも、もし何か言われても、どんなことが起こっても、それに動じず踊りきってよね」
 決してそう言われたわけじゃないのに、風間先輩の言葉は「信じてるからね」と変換され脳に届いた。
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