光のもとでⅡ
「……ツカサだって誰に告白されたなんて話はしてくれたことないよ?」
 その理由はものすごく簡単だ。
 告白されてから翠に会うまでに脳内消去が済んでいるからに過ぎない。
「ハチマキの交換は?」
 不服を訴える視線とともに返された言葉は、
「そんな話だってしてないもの」
「ふーん……」
 風間にからかわれただけだと思えば面白いわけがないし、数回のやり取りをしたにも関わらず、未だ風間と一緒にいた理由が判明しないことにも納得がいかない。
 じっと翠を見下ろしていると、
「ツカサ……尋問みたい」
「そう取られてもかまわない」
 前にもこんなやり取りをしたことがあったけど、それはいつのことだったか……。
 記憶を紐解く前に翠が口を開いた。
「今日ちょっと組で色々あって……。歩きながら話すから帰ろう?」

 翠に袖を引っ張られる形で歩き始めたものの、なぜ袖なのか、と疑問を持ちながら翠の話を聞くことになる。
 ひとまず話の腰を折るのは嫌でそのままいたものの、最終的な結論は、やはり手をつなぐべきだろう、に落ち着く。
「それで最後に呼び止められたの。呼び止められて――激励された感じ」
 文末に疑問符がつきそうなイントネーションだったが、かろうじて押しとどまったふう。
 翠が話した内容は俺が予測していたトラブルの範疇であり、想定以上のことが起きなかったのなら特段問題はない。
 そのアクシデントのあとに団長である風間が声をかけるというのも理解できなくはなかったが、その場に簾条たちがいても問題はなかったんじゃないか、という引っかかりだけが最後まで残る。
 なら、本当はどんな話をしていたのか……。
 仮に風間が口にした「二回目の告白」や「ハチマキの交換」といった内容だったとして――。
 隣を歩く翠の様子を観察してみるものの、俺の顔色をうかがっているような表情ではあるが、何かを隠しているふうではない。
 そこまで考えてはたと思う。
 詮索しすぎだろうか、と。
 正直なところ、激励の内容を知りたい。でも、これ以上風間にこだわるのもバカらしい。
 俺は追及することをやめた。
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