光のもとでⅡ
「ツカサ、大学受験はいつ?」
 突然の質問に面食らう。
 何がどうして紅葉から受験の話に飛躍するんだか……。
「なんでいきなりその話?」
 素直に尋ねてみると、翠は俺と視線を合わせたままフリーズした。
「翠……?」
「あ、えと……今日、風間先輩とそういう話をして――」
「そういう話って?」
 激励以外にも話す機会があったということだろうか。
「翠……?」
「あ、あのねっ、風間先輩も藤宮の医学部を受けるっていうお話を聞いたの。それで、風間先輩は普通の推薦入試だけど、ツカサはAO入試か指定校推薦枠じゃないかって」
 あぁ……そういうことか。でも、
「受験ならもう終わってる」
 最終面接は九月にあったし、その結果なら今月の頭に郵送されてきた。
「ツカサごめん、もう一度言ってもらえる?」
 声が震えている気がして翠に視線を戻すと、翠は呆けた表情をしていた。
「もう終わってるけど、それが何か?」
「……終わっているの?」
「さっきからそう言ってるけど……?」
 翠はいったい何を言いたいのか。
 そのまま観察を続行すると、
「いつ……? いつ、終わったの……?」
 なんか、泣きそうな声なんだけど……。
「今月頭には合格通知届いてたけど……それが何?」
 何がどうしてこんな表情をされなくちゃいけない……?
「翠?」
 顔を覗き込むと、目の表面に溜まっていた水分が零れ落ちた。
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