光のもとでⅡ
「なんでって……意味なんてないよ。ただ、自分のスケジュールとして話す程度。司だって長期休暇に入るときや車の免許の合宿へ行く際には翠葉ちゃんに予定を話しただろ?」
 夏休みは――。
 インターハイまでは部活漬けになるとだけ話していた。自分に余裕がある日は自分から連絡を入れて、翠の予定が空いていたら会う。そんな感じだった。
 インターハイの日程は、翠が来るというから教えたように思う。
 ただ、日程に関してはインターハイ前は部活漬けになるという話の延長で話していたかもしれない。
 車の合宿へ行くことは翠の誕生日を祝った日に話していて、日程を知らせたのはその間留守にするから。
 連絡をもらったとしても授業中に応答することはできないし、メールの返信にもタイムラグが生じる。それらをあらかじめ知っていてもらうために話したに過ぎない。
「何黙ってんのよ」
 会話に加わった義姉さんに声をかけられ、
「言うには言ったけど、言う必要があったから言っただけで、言う必要がなければ言わなかったような気がする」
「「言う必要って何?」」
 ふたりは声を揃えて問い返してくる。
 そこで、今しがた考えた内容を話すと、
「……ものすごく司らしいな」
 ふたりから向けられる視線に居心地が悪くなり、
「俺らしいって、何?」
「「合理性に重きをおいているところ」」
 それのどこが悪い、と思う自分は何か欠如しているのだろうか……。
「司がこんな話するってことは、翠葉ちゃんとなんかあったんだろ? っていうか、まんま今の話なんだろ? だとしたら――翠葉ちゃんが不憫だな」
「翠葉ちゃんが不憫だわ」
 またしてもふたり声を揃えるから居たたまれない。
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