全部、抱きしめて
あたしは紗江の話を黙って聞く。

「どうらや、タケルくんと別れた後に妊娠が分かったらしくてね。1人で産むことを決意したみたい」

紗江は言葉を続ける。

「何も知らないタケルくんは由里子とつき合い始めた。そして年月が経ち結婚を決めた頃元カノが自分の子供を産んでいたことを知ってしまったの」

「......」

「タケルくんって優しい人だったでしょ？ 元カノを放っておけなくなって、由里子との結婚を破断させることを選んだってわけ」

「あたし一言も聞いてないよ。紗江はどこからその情報を知ったの？」

「２ヶ月くらい前かな。由里子と直也さんがちょうどつき合い始めた頃だったらかな。タケルくんの友人に居酒屋さんで働いてる子がいたの覚えてる？」

「うん」

タケルとつき合っている時、あたしはよくそこの居酒屋さんに行った。

紗江やりかも交えて行くこともあった。

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