全部、抱きしめて

あたしは座り込んだまま動けない。
ただただ呆然としていた。

「オレには財布を奪ったようにしか見えなかったけど?」

「......」

「すぐそこに交番あるから行こう」

「くそっ」

財布を奪った男の人は逃げ出そうとしたけど、更にギュッと後ろから強く腕で首を巻かれあっさり観念したようだった。

「交番まで来てもらっていいですか」

あたしを助けてくれた男の人にそう言われ、「はい」と返事をして立ち上がる。

一体どんな人が助けてくれたの?
ちらっと顔を見ると、そこには見覚えのある顔があった。

タケル......。
元カレのタケルだった。

嘘だ嘘だ。
そんなわけないよね。
でも似てる。すごく似てる。

タケルらしき人は、財布を奪った男の人の手首を強く掴んで数キロ先の交番へ。

それから、被害届を提出して財布を返してもらい犯人を残して交番を後にした。




































< 143 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop