全部、抱きしめて
「行くぞ由里子」

直也はあたしの手を取り歩き出した。

数メートル歩いたところで、後ろを振り向くとかおりさんは長谷部さんと何事もなかったかのように話をしていた。

そっか。
長谷部さんとも知り合いなんだ。

直也は自慢げに美人の彼女を長谷部さんに紹介したんだろうなぁ。

そんなことを思うあたしは卑屈だろうか? 美人にとらわれすぎ?


直也と向かった先は体育館の外だった。

「ごめんな由里子。嫌な思いさせたな」

「あっ......。うん」


「あいつもうちの会社の関連した所に勤めてるから、応援側で来たんだと思う。まさか会うなんてな」

かおりさんの事、全部知ってる言い方に過去の繋がりを感じて悲しくなる。

しかも“あいつ”だなんて、親しみのこもった言い方も嫌だった。

今のあたしは心に余裕なんてない。

「どうして2人で歩いてたの?」

「由里子を探してたら会ったんだよ」




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