全部、抱きしめて
大瀬良さんは、ムッとしたような顔になる。

「だったらすぐ帰れば。もう金輪際、オマエとは関わらない。会社でも顔も見ない。シカトだシカト。元カレ思い出して淋しくなっても電話とかかけてくるなよ」

冷たい口調にショックを受ける。
少しは引き止めてくれると思ってたあたしは馬鹿だ。
1人になる勇気なんてないくせに。
矛盾だらけの心。

この場から去らなきゃいけない。
でも体が動かない。

「本当は帰る気なんてないんだろう?」

今度は打って変わって優しい口調の大瀬良さん。

「帰りたくないです。まだここにいてもいいですか?」

「いていいよ。何なら今日も泊まっていけよ。そこは由里子に任せる」

「迷惑じゃありません?」

「迷惑だったら、こんなこと言わない」

大瀬良さんが、あたしを泊めてくれるのは同情?

それとも、てっとり早くヤレる女だから?

それでもかまわない。
そう思うあたしはイカれた女かもしれない。



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