はないろ
「アレンジでもしてみる?まだ時間あるし。」

そう言って顔を向けた先にあるアンティーク系の時計は五時過ぎを指していた。

「いいの?ありがとう」

鏡の前のソファらしき椅子に腰掛けると、櫛がわたしの髪の毛を撫でていく。
そういえば、と話を振ってきた澤村くん。

「此見さんてなんで俺のこと君付けなの?…名前で呼んでよ」

いきなりの爆弾発言に冷や汗が全身にぶわあっと浮かぶ。

「い、いや…澤村くんは、澤村くん…だし、ね?」
「それの意味がわかんないの、俺にだって名前はあるし。」

じゃあなんでわたしのことは此見さん此見さんなんて言うんだ、矛盾か。

「じゃあ…澤村、く…澤村。」

えー、と拗ね気味になりながらも納得してくれたようで、じりじりとした質問責めは無くなった。

くん付けが癖になってしまい、なかなか呼べない。
そんなあーだこーだ言っている間にも、髪の毛がストレートになっていた。

ぐねんぐねんと寝癖のように形がついた髪の毛が、いつ生え変わったのだろうか。
まさかあのとりーとめんと、たるものを使ったのだろうか。
テレビに出る女優さんのようにさらさらとしていて。

「えっ、なにこれ!どうやったの…?」

これはただクリーム塗ってアイロンかけただけだよ、と伝えられた。
現代は凄いな、進歩してるんだなあと感心。

今日は早めに帰りなさいよ、とか言う澤村く…澤村はお母さんのように見えた。

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