はないろ
特に何もない道を歩き、学校に向かう。
本当に何もない。たまに近所の優しいおばあちゃんおじいちゃんが花に水やりをしているくらい。

「おはよ、おばあちゃん」

「あらはなちゃん、おはようね。いってらっしゃい。」

軽く会釈をして通り過ぎる。ギャルみたいなちゃらちゃらした人には分からないかもしれないこの温かさが大好きだ。

そうこうしてるうちに学校に着く。朝の早いうちに行かないと人から見られる。別に変な格好をしているわけでもない。人とコミュニティを取るのがいまいち苦手なようで、先輩とか先生とかに挨拶するのも一苦労。

そんなことは置いといて、

三階にある教室に向かう。


「おはよー!はなー!」

挨拶してくれたのはわたしの尊敬している人のひとり。

「今日も無駄に元気ですことね〜〜玲ちゅわん、おはよ」

口には出さないけど、いつも話しかけてきてくれてうれしい。

失敬な〜〜〜とけらけら笑う玲は可愛い。モデルのように顔のパーツが整い、化粧をバッチリ決めている「カワイイ」ではなく、心から笑っているその姿が本当に可愛い。

クラスの人たちとわいわい話しているうちに、SHRの時間が来てしまった。

がた、と自分の席に着き、先生を待つ時間は真後ろにいる男子や女子分け隔てなく話していた。

「え、今日席替えなの?知らなかった」

「はないっつも聞いてないじゃん」

席替えがあるらしい、わたしは少し今日を生きるのが楽しみになった。

先生が威勢良く教室に入るとまるで嘘のように静まり返るわたしたち。


「こないだ言ったように席替えするかんなー、一時間目始まる前に机と椅子移動させとけよ。」

えー、やだーとその席替えの表の紙を見ながら騒いでいる。そんなのに文句言ったって…と思いながら席を移動させようと紙を見た。


「…窓際か、先生ぐっじょぶ」

大抵の授業を聞いていないわたしは開放感のある席がいいと思っていた。


「…澤村…かな、た…?」


見たことのない名前に首を傾げながらも、まあいいか、と決めつけ席を移動させた。


この名前に惑わされる運命も知らずに。
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