恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
焼肉小屋から戻って来た時には、家中は寝静まっていたが、真琴はあまりの疲労と残っていた酒気のせいで、“お仕置き”をする暇などなく深い眠りに就いてしまった。
真琴と枕を並べて、古庄は座敷の天井を眺めた。
――小さい時、あの天井の木目が、人の顔に見えて怖かったなぁ…
そんなことを思いながら、昔のことを思い出す。
その木目が怖いと思うようになったのも、晶が「幽霊が木の中に閉じ込められて、あんな風に顔が浮いて出てくる…」などと古庄に吹き込んで、古庄がそれを信じたせいだ。
実家に帰省するたび、こんな忌まわしいことばかりを思い出して、ここは古庄にとって落ち着ける場所ではなかった。
でも今は、真琴が隣にいるだけで、こんなにも安らかな気持ちになれて、この家の空気を吸っている…。
古庄は寝返りを打って、安らかな寝息を立てる真琴を見つめた。
いつか、真琴との間に子どもも生まれるだろう…。
その子どもと共に、この溢れかえるほどの自然の中でいろんな体験が出来たら、どれほど素晴らしいだろう。
そんな楽しい空想をあれこれとしているうちに、古庄の意識も次第に遠のき、いつしか深い眠りに落ちていった。