恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
非の打ちどころのない完璧な容姿の古庄の横に立つと、静香の洗練された美しさが一層引き立つ。
釣り合いがとれているお似合いの二人の間に立つと、まるで自分は闖入(ちんにゅう)してきた部外者みたいだと、真琴は思った。
自分はここにいてはいけないような気さえしてきて、真琴の胸は切ない痛みと苦しさで、張り裂けそうだった。
「……真琴ちゃんのお相手って…、古庄さん?」
驚きを呆然とした表情に変えて、静香はつぶやくように声を出した。
真琴は座ったまま静香を見上げて、こくんと一つ頷いた。
その事実を確認して、静香はもう一度古庄を見つめる。
古庄はまだ驚きが尾を引いて、何も発することは出来なかったが、ただ静香を見つめ返して、目で肯定した。
「お二人とも、座って下さい」
真琴の胸は、緊張のあまり激しい動悸で騒いでいたが、努めて冷静に二人に促した。
丸いテーブルを囲んで三人が向かい合っても、ぎこちない空気は拭い去れない。
「…驚かせてしまって、ごめんなさい。だけど、やっぱり静香さんにはきちんと報告しておかないといけないと思って……」
そう言うと、真琴は唇を噛んだ。
こうなることを策したのは誰でもない自分だけれども、これからどうやって話を進めていったらいいのか…。
それが分からずに、言葉が続かない。
三人の間に漂う沈黙を破って、店員が古庄の分の注文を取りにやって来た。
店員は、古庄がコーヒーを頼む短い間にも、チラチラと何度も古庄の顔を見ずにはいられないようだ。
唇を噛んだまま張り詰めている真琴の表情を見て、古庄は胸が突き上げられた。
真琴はずっとこのことを思って、重苦しい気持ちを抱えていたのだ。