恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②



「真琴ちゃん。可愛いだけじゃなくて、案外しっかり者なんだな……」


畑中に散らばっている稲束を集めに、再び向かっている真琴の後姿を眺めながら、晶がポツリとつぶやいた。





「そりゃ、俺の嫁さんだから……」


古庄も微笑みながら愛おしそうに真琴を見つめ、その表情を幸せで満たすと、晶もそれによく似た穏やかな笑顔で弟を見上げた。



「お義姉さーん!もう稲を掛けられるところがなくなりましたー!」


作業に精を出す真琴が、遠くから叫ぶ。


「…それじゃ、稲木を足さないと…」


晶がそう言いながら、トラックの方へ向かう。



古庄は深まる秋に色を変える山々を見渡し、その山々が囲む青く高い秋の空を見上げた。

稲わらの匂いのする澄んだ空気を吸い込むと、子どもの頃に戻ったような気持ちになる。



だけど、この見慣れた風景の中に真琴がいる…。



そこに真琴がいてくれるだけで、懐かしい故郷の風景は、また新たなものになって古庄の心に刻まれた――。











     ―― 完 ――

  恋はしょうがない。Side Story②

      2014.12.12









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