恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
「そっか、お姉ちゃんのことだから、その辺もちゃんと見て、ちゃんと考えてるよね」
と、最後は自分の姉を信頼することで、姉の幸せを願うからこその不安を払しょくした。
「お―――い!!」
その時、家の方から真琴の声が響いた。
「二人とも、こんなところにいたの?朝御飯よ――!」
朝日を受けて、緑の公園に立つ真琴の姿。
その顔は、太陽と同じくらい嬉しそうに輝いていた。
「お姉ちゃん!僕ね、スクリューパスできるようになったよ!!」
「えっ?ホント!?」
「ホントだよ!ほらっ!!」
と、正志も同じくらい表情を輝かせて、真琴にパスを投げて見せた。
パシッ!とそれを胸の前で受けて、真琴は目を丸くする。
「ホントだ!きれいに回転してる!それに、ずいぶん長い距離もパスできるのね!」
「当たり前だよ。長いパスでも正確に飛ばすために、回転をかけるんだから」
「へぇ~」
“もうやめる”と断言していたにもかかわらず、楽しそうにラグビーのことを語る正志に、もっと嬉しくなって、真琴から優しい笑みがあふれてくる。
古庄は額に出た汗をぬぐいながら、そんな微笑ましい姉弟のやり取りを見守った。
「お姉ちゃん、それ仕舞っといて!僕、先に朝御飯食べてるから!」
「えっ…!?どこに仕舞うの?」
真琴の問いかけが聞こえていないのか、正志は何も答えず、先に走って行ってしまった。
「正志くんは筋がいいね。少し教えたら、すぐにできるようになったよ」
正志を目で追って困り顔の真琴に、古庄が声をかける。
真琴は古庄を見上げて、肩をすくめた。
「筋がよかったら、部活で教えてもらって、できるようになってると思うんですけど」
真琴の指摘に、古庄は可笑しそうに鼻から息をもらした。