天使が舞い降りる。
歩いて数分で駅に着く。
帰りの電車に人はあまりいなかった。
いたのは中年のスーツを着た男に、黒い帽子を深くかぶった、必死に携帯の画面を見ている長髪の男がひとり。
窓を開けて風にあたりながら…電車はゆっくりと動き出す。自分の心とは裏腹に、空はムカつくくらい、爽やかな快晴だった。
『次は、陸奥桜山駅、陸奥桜山駅です。お降りの際はー…』
しばらくして、アナウンスが流れる。私はその場から立ち上がった。
電車を降り、駅のホームを抜けてひとり、静かな住宅街にさしかかる。
横には家が規則正しく並んでいて、目の前のコンクリートの道路をしばらく歩いて行けば、自分の家だ。
たった一度でよかった。
「奈々子の彼氏の顔……見たかったなあ」
奈々子が初めて好きになった人…
誰に言うでもなく、そうつぶやいたときだった。
―カッ……!!
突然…
「…っ!!」
その場が、強く光り出したのは……