ルージュのキスは恋の始まり
「これぐらいやらないとこの女はわからないだろ?化粧品会社で口紅作ってるのに、社長同席の打合せにノーメイク。俺をなめてるだろ」

「玲王!」

「こんな社員雇ってるからうちの会社が業界3位に転落するんだよ。ただの研究者じゃない。口紅の研究者だろう。自分が試さないでどうして消費者が買えるんだ?誰だ、こんな女雇ったの?」

 社長の言葉に思わずカッとなって、彼の頬を思い切り叩く。

 バチンとかなり強い音がしたが気にしない。

「だったら、首にすればいいじゃない!あなたがした事はセクハラよ!」

 私の事なんて何も知らないくせに。

 勝手なことばかり言って。

「だからって、上司の頬を叩いてもいいのか?」

 社長が私を見据える。

 彼の頬には私の手形がくっきりついている。

 いい気味だ。

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