ルージュのキスは恋の始まり
 彼の視線が上にいき、私と一瞬目が合うと彼の口角が上がった。

「落ちるかどうか試してみようじゃないか」 

 私にとっては冷たくて残酷な言葉だった。

「な・・何を!」

 社長は私に顔を近づけ私の唇を強引に奪った。

 金縛りにあったかのように私の身体が動かなくなる。

 時間にすればほんの数秒。

 その数秒が私に恐怖をもたらす。

 キスから解放された途端、私の身体がガクガクと震え出した。

 でも、社長はそんな私の反応を面白がっている。

「本当だ。キスしても落ちないし、相変わらず美味しそうに潤ってる」

 社長は私の唇に触れながら、私をからかう。

「玲王、やり過ぎですよ」

 社長の横でずっと静観していた青年が注意する。
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