ルージュのキスは恋の始まり
「弟によろしく伝えろよ。他の奴には言わないから安心しろ」

 フッと微笑して玲王は後ろ手に手を振る。

 私はそんな彼の後ろ姿を睨み付けた。

 誰があなたみたいな俺様にキスの再現なんか頼むか!

 完全にからかわれてるみたいでムカツク。

「あんたなんか好きじゃない」

 玲王の背中に向かって小さく呟く。

 彼には私の声はもう届かない。

 彼がいなくなって寂しいと感じる私は・・どこか矛盾している。

 好きになんかならない。

 玲王も他の誰も絶対に好きになんかならない。

 私は自分に必死に言い聞かせる。

 でも、玲王がくれたルージュを私はお守りみたいにぎゅっと握りしめた。
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