ルージュのキスは恋の始まり
「・・・・」

 なんか怪しい。

 百合ちゃんは何をそんなにびくびくしてるの?

「ほ、ほら、美優さん、撮影所に着きました」

「私は車の中で待ってるから、百合ちゃん渡して来てくれない」

「それじゃあ意味ないんですよ。いいから、いいから」

「意味ないってどういう事?」

 私は百合ちゃんに突っ込むが、彼女は私の言葉を無視して私の手を引く。

「美優さん、時間がないんです。早く」

「でも・・・私が姉ってのは公表してないし、行けないよ」

「大河さんの命令には逆らえません」

 百合ちゃんが嫌がる私を無理矢理撮影所の奥の控え室まで連れていく。

 幸い宣伝部の面々には見つからなかったけど、このままここにいれば見つかって嫌味を言われるのは時間の問題だ。
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