ルージュのキスは恋の始まり
 化粧に興味がないとかじゃない。

 故意に化粧しないでいる。

 美しくなることを拒否してるような印象を受けた。

 まるで、自分の存在を消すかのように。

 綺麗な黒髪も1つにまとめてシスターみたいに肌の露出も少なくて、自分に近づくなって全身で言っているようだ。

 でも、あの女はわかってない。

 そういう女ほど近づいて暴きたくなる。

 全てを。

 それに、彼女の身体から香ったアロマのような香り。

 香水なんかよりずっと男を誘う。

 そう、彼女は全然男をわかっていない。

「確かに、玲王がけなしてから急に元気になりましたよね。震えてるの見て流石にヤバイと思いましたけど。あなたは意外と優しかったんですね」

「意外とが余計だろ。お前、俺に喧嘩売ってるのか」

 俺がキッと軽く片岡を睨みつけると、こいつはしれっとした顔で話を変えた。
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