ルージュのキスは恋の始まり
「まさか。でも、どうして橘さんを宣伝部に異動させるんですか?」

「暇潰しかな?毎日1時間かけて研究所通うの面倒だろ」

 自分でもどうしてだろうって正直思う。

 でも、やっぱり気になるんだ、あの女が。

 もうちょっと近くに置いて見ておきたい。

「どこまで自己中なんですか?今までのおもちゃみたいに飽きたからって簡単に捨てないで下さいよ」

「だから、期間限定の異動にしたろ」

「捨てるの前提じゃないですか。会長に知られたら厄介なのわかってますよね?橘さんに関する資料見ると、縁故で入社したみたいですよ。まあ、研究者はほとんどそうでしょうが。だから、問題行動は控えて下さいね。」

「それをバレないようにするのもお前の仕事だろ?」

 仏頂面で言うと、片岡がギロッと俺を睨んだ。

「自分に婚約者がいるっていう自覚あります?」

 ああ、そう言えばそんなのいたっけ。
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