ルージュのキスは恋の始まり
「玲王の・・馬鹿」

 涙がポタポタと床に落ちる。

 こんな状態じゃ会社になんか行けない。

 その日は会社を休み、涙が枯れるまで泣いた。

 玲王が用意してくれた食事も喉を通らず、シャワーを浴びると自分用の客室のベッドに横になる。

 玲王が帰って来たのは真夜中だった。

 でも、今の惨めな顔を彼に見られたくない。

 会いたくてたまらないのに、会えない。

 一目見れば私が今日泣いてたなんて一目瞭然なのだから。

 そして、玲王の顔を見る事がなく一日が終わる。

 朝起きると、また昨日と同じように彼の姿はなくて食事とメモが用意されていた。

「玲王なんか嫌い」

 メモを握り潰してごみ箱に捨てる。

「玲王なんか大嫌い」

 メモを捨てても心の中はスッキリしない。
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