ルージュのキスは恋の始まり
 脇坂さんがぎょっとした表情で俺を見る。

 酔った男は何をやらかすかわからないし、ここで釘を刺しておくのも良いだろう。

 狼の群れの中にあの子を放り込むのは危険だ。

 俺ももうすぐいなくなるし、ここで言っておかなければ言う機会を失うだろう。

「酒の席には百合ちゃんを連れていかないで下さいよ。もし連れ出すような事があれば奥さんに腹芸の事言いますからね」

 口をぱくぱくさせている脇坂さんを放置して、俺は撮影に戻った。

 次のテイクは無事に終わり、今日の撮影は終了。

 玲王に連絡するのは明日にしよう。

 少しは反省させた方がいい。

 そんな事を思う俺は意地悪だろうか?

 まあ、悩めばいいんだ。

 それから次の朝、百合ちゃんが約束通りお弁当を持って現れた。
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