ルージュのキスは恋の始まり
「でも、今日の打合せ、あの新社長が同席するんですよね?メイクした美優さん見て、イケメン社長がCMに起用なんてことにならないかな。秋の新作のモデル決めるのもそろそろだし」

「妄想はそこまで」

「え~、美優さんぐらいキレイなら私、女優になってますよ」

「亜紀ちゃん、乱視なんじゃない?私が亜紀ちゃんくらい可愛かったら、お嫁さん目指してるかな」

「今からだってお嫁さんなれるじゃないですか」

「ふふ、そうね。もう時間がないから行くわ」

 試作品と説明資料を持って会議室に向かう。

 会議室にはまだ誰もいなかった。

 ふと時計を見れば打合せの5分前。

 ちょっとでも時間があると考えてしまう。

 私も3年前までは亜紀ちゃんみたいだったな。

 夢があって、怖いもの知らずで・・・・・。

 でも、今の自分にはもう夢がない。

 口紅の開発の仕事だって、正直辛い。

 この仕事には誇りを持ってるけど、大学の研究室に戻りたい。
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