ルージュのキスは恋の始まり
「お前が出たいくらいだろう?」

 俺が田辺をからかうと、図星だったのか女狐のようだった彼女の顔がボッと火がついたように赤くなった。

 女を虜にする男・・高橋大河か。

「いいだろう。高橋大河の所属事務所と広告代理店に連絡を取れ。コンセプトは昨日話した通りだ。CM撮影には俺も顔を出す」

「はい、わかりました。あの・・・・」

 田辺が躊躇いがちに口を開く。

「何だ?まだ何か報告があるのか?」

「・・・橘はこのままでいいのでしょうか?」

「今日は体調が悪いらしい。明日から行かせる。お前はもう下がっていい」

「・・・はい」

 田辺が不服そうな顔をしながら部屋を出ていく。

 あの顔。

 好奇心というよりは嫉妬か?

 俺とこのまま一緒にいさせておくのが嫌らしい。
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