イップス


「市川さんに、俺のこと悪く言っただろう」

「え、いや…相談はしましたけど、桜庭さんのこと、」

「お前に俺の何が分かるんだよ! このヘタクソ! お前になんか、キャッチャーやってもらいたくないんだ」

 被害妄想だ。俺が何か反論しようとしても、更に激しく罵られるだけで、少しも取り合ってはもらえない。こんなんで、試合なんかできるはずもない。
 グラウンドから逃げ出したい気持ちでいっぱいなのに、監督は決してそれを許してはくれない。


 誰にも相談できないまま、俺は遅々として進まない練習を繰り返した。

 こんな無意味な練習に、一体何の意味があるのだろう。ブルペンではサインを少しを守ってくれない、変化球はわざと体に向かって投げてくる。これがつらくないはずがない。

 国体も終わり、三年生は練習に現れなく、ますます俺の苦悩は続いた。
< 11 / 13 >

この作品をシェア

pagetop