裏腹な彼との恋愛設計図
どちらかと言えば消極的で主体性がなく、右にならえという性格の私が、自らの意志で転職するのはかなり冒険だった。

けれど、前任のアシスタントの女性が産休に入るという話を兄が小耳に挟み、それを聞いた私は今しかない!とすぐさま面接を申し込んでいた。


今ではその選択は正しかったと確信している。

四月に入社して約二ヶ月、仕事を引き継いでからはまだ半月ほどしか経っていないけれど、すでに馴染めているし、毎日生き生きと仕事出来ていて楽しいから。

アシスタントの仕事は、皆のサポートや雑務が主なのだけれど、それでも以前の会社にいた頃よりモチベーションが高くなっていると思う。


ミライトホームの皆さんはとっても親切で、私を快く迎えてくれて仕事もそれぞれ丁寧に教えてくれるし。

……まぁ一人だけ、ちょっと手強いあの彼がいるけれど。





「おはよう、紗羽ちゃん」

「あ、おはようございます!」

「紫陽花キレイに咲いたわね~」


まったく甘くない壁ドンをされた翌日の朝。

掃き掃除のついでに正面玄関の前を彩る花達に水をあげていると、不動産担当の社員、瀬川(セガワ)さんがにこやかに出勤してきた。

ふくよかな体型でいつも笑顔の、肝っ玉母ちゃんという呼び名が似合うようなおばちゃんだ。

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