裏腹な彼との恋愛設計図
「もうお前もいい歳だろ。こんなことしてたらいくつになっても結婚出来ないぞ」

「一時はあたしもそれを心配したけどね、もう気にしないことにしたの。
離婚した人何人も見てきたし、育児疲れでゲッソリしちゃったコもいるし、なんか結婚に夢がなくなってきちゃって」

「お前の周りはどうなってんだ……」


大概の女はこの年になったら、家庭を築く周りの人間を見て焦るものじゃないのか?

絵梨子さんのような独身貴族もいるが、あんなに謳歌している女性も稀なように思う。

鈴森は……ぽわ~んと呑気に幸せな家庭を夢見ていそうだな。


たんぽぽの綿毛みたいに、ふわりと穏やかに笑う彼女を何気なく思い浮かべていると、カップを空にした杏奈が背筋を伸ばして言う。


「さーて、とりあえず話は済んだし。せっかくこっちに来たから、ちょっと街をぶらぶらしていこうかな」

「してけば? 俺は帰る」

「何言ってんの、一緒に行くわよ」

「何でだよ」


顔をしかめる俺に構わず、にこりと微笑んだ彼女は席を立ち、さっさと出口へ向かう。……テーブルの上にスマホを置いたまま。

これを人質代わりに、俺についてこさせようとしているのだろう。


「ったく、面倒な女……」


盛大なため息を吐き出すと、俺はビビッドピンクのスマホを手にして重い腰を上げた。


< 149 / 280 >

この作品をシェア

pagetop