裏腹な彼との恋愛設計図
「……隼人って昔からそう。あたしには何も教えてくれないのね」


寂しげな声が、静かなオフィスにぽつりと響いた。

俺は特に気にしないフリをして、ビジネスバッグに書類を詰める。

そんな俺を眺めながら、杏奈は隣のデスクに軽く寄り掛かった。


「あの子には話してるの?」

「あの子って?」

「鈴森さんよ」


──ピクリ、と無意識に反応してしまう自分が憎い。

思わず止めてしまった手を再び動かしながら言う。


「何で鈴森が出てくるんだ」

「なんとなく。隼人、早く本社に戻りたいオーラが出てるし、原因はあの子もあったりするのかなって」


こいつ、女の勘ってやつが妙に鋭いからな……この間本社に来た時、アンテナを張り巡らせていたのかもしれない。

この際だ、はっきり言っておいてやろう。

ヘルプに来た当日から食事に誘われて、断り続けるのも面倒になっていたから。

俺は杏奈に向き直り、口を開く。


「そうだよ、俺はあいつに惚れてんだ。他の女はもう無理」


目を逸らすことなく言うと、彼女の瞳が大きく見開かれた。

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