裏腹な彼との恋愛設計図
矢城くんに抱きしめられた時のこともあるし、流されやすい女だと思われてるかな……。

そうだとしたら、すごく切ないし悔しい。



包帯を巻き終わると、柊さんはすぐにこの部屋を出て玄関へ向かう。

靴を履きながら、後を追う私を振り返ってこう言った。


「お前は今日はもう会社戻らなくていい。何かやらなきゃいけないことあるか?」

「いえ……でも」

「もう退勤するだけだし、また往復するの面倒だろ」


それもそうだ。

腕時計を見やるといつの間にか定時を過ぎているし、これからまた柊さんと二人で車に乗るのも、正直ちょっと気まずいかも。

素直にお言葉に甘えることにした私は、彼に頭を下げる。


「なんか、色々すみませんでした」

「いや。これ、ありがとな」

「いえ。家に帰ったら保冷剤とかで冷やしてくださいね。打ち身にいいと思うから」

「お前は保健の先生か」


呆れたような笑いをこぼす柊さんに、私も自然と笑ってしまった。

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