On the way
「私・・・ね?留学の噂が出た頃、透のことはあきらめようと思ったの。
知ってた?あなたの留学の話、雑誌にも書かれてたのよ?世界レベルの高校生、って。
透がすごい人なのは知ってたけど、こうなるともう片思いすらさせてもらえないほど
 本当に遠い人になっちゃうみたいで寂しかった。・・・泣いたわ、すごく」

「そんな・・・俺は」

「うん、わかってる。透が悪いんじゃない。私が勝手に思って泣いただけ。
 でも泣くだけ泣いたら気が済んだの。縁がなかったんだから仕方ないって。
  片思いで終わる恋なんてこんなものなんだなって、今度は笑っちゃった。
 だから卒業式の日にあなたからも卒業しようって決めてた。なのに・・・」

 「?」

「その卒業式の日に透は私を好きだと言ったわ。
 驚いた。本当にびっくりしたの。
 でも嬉しかった・・・すごくすごく嬉しかった。
  嬉しくて泣いたのなんて、あの時が初めてだった。
 だからもう何があってもあきらめないって決めたの」

「はるか」



微笑んだ彼女に思わず唇を重ねた。
はるかの胸の内をこの時初めて聞いた俺は
彼女を想う自分しか見えていなかった事にようやく気付いた。


色々な思いと想いが混ざりあって込み上げてくるのを
どう言葉にすればいいのか分からなかった。



「ね・・・透」
「ん?」
「私を好き?」
「ああ、好きだ」
「これからも、離れていても好きでいてくれる?」
「当たり前だ」
「それなら頑張れる。・・・頑張って待ってる」
「強いな」
「違う。強くなれるの。・・あなたが私を強くするの」
「はるか」



彼女の名前を呼ぶ他に言葉が出なかった。


無意識に彼女を引き寄せ抱きしめていた。
彼女の潔さと迷いの無さに気持ちが洗われていくようで
自分の情けなさと狡さと弱さを恥じた。



「あのね、透。私、頑張るから・・・協力してくれる?」
「もちろん」



どんな協力だって惜しまない。俺にできるすべての事をしよう。



「あのね・・・」
「ん?」
「あの・・・抱いてほしいの」



自分の耳を疑った。
まさかはるかがこんな事を言い出すとは思いもしなかった。


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