【完】ヴァンパイア、かなし

一場『差し伸べる手』

正直言うと、学校に行くのは億劫だ。


それは、満島先輩に文化祭のことを断る旨のメールを、あの後学校を休んで自宅のベッドの上から一方的に送ってそれから携帯に電源すら入れていないこともひとつ、理由としてあるのだけれど。


それより、学校へ向かう途中、靴箱、廊下、教室の自分の席へ辿り着いた後も、ずっと多くの視線に晒されなければならない自分の姿によってのストレスが、一番かもしれない。


あの日……正確には、一昨年になるあの、赤嶺先輩との昼休みの会話の後、倒れてからの記憶が一切無かったのだが、気付けば僕は自室のベッドにいて、目が覚めると、傍らには父と母が座っていた。


僕のここ最近の体調のおかしさはヴァンパイア一族の呪いで無いとすれば、成長期における体の変化かもしれない、という父と同じ答えを突き付けた母。


そんな母は僕に、学校に血液のパックを持って行き、週に一度だった僕の摂血は、少量を一日に二度と、かなり大量になった。


そうなると、必然的に学校でどこかのタイミングでそれを摂取しなければならない。


そこで起きる問題は、僕の、目立ちたくないが為の黒に染め上げた髪の毛である。
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