幼馴染みはイジワル課長
高校生くらいの梨絵が私を物珍しそうにジロジロ見て、驚いた様子で言った。






「…そうかな」

「うん…綺麗になった」


真っ白で薄暗い不思議な空間に、私と梨絵の2人だけしかない。

亡くなったはずの梨絵が目の前にいるなんて…本当は怖いはずなのに…そんなことは全然思わない。

むしろ心地よくすら感じて、どこか懐かしいような気持ちにもなる…






「あの、さ…」

「なあに?」


隣にいる梨絵に遠慮がちに声をかける私。梨絵はキョトンとした顔をして首を傾げた。






「…本当に梨絵だよね?」


目の前にいるあなたは…本当に私の幼馴染みで親友の梨絵なの…?




「失礼ね~幼馴染みの顔忘れちゃったの?子供の時からずっと一緒だったでしょ?ま、死んだ私が目の前に現れてもピンと来ないか」


アハハハと笑う梨絵は、当たり前だけどその笑い方までも変わっていなかった。






「そうだよね…ごめん」

「そうやってすぐ謝るところも変わってないね」


クスクス笑う梨絵に、私は少し照れながら下を俯いた。




やっぱり本物の梨絵なんだ…

ずっと会いたかった人に会えた…

こんな悲しい形でだけど…また会えたんだ……







「…碧は元気?」


梨絵の口から“碧”の言葉が出てきて、私の胸はズキンッと傷んだ…






「うん…」

「そう…まあ知ってたけどね。いつも見てたから」


私に笑顔を見せる梨絵に、私はずっと胸にしまっていたことを思い切って切り出した…






「梨絵…ごめんね。私……ずっと碧の事が好きだったの…」



生前の梨絵にずっと隠していたこと。

ずっと言えなかった事実…






「知ってたよ…」

「え?」

「桜花わかりやすいもん。それに…親友なんだから当然でしょ」


梨絵のその言葉に涙が溢れた。







「碧も桜花の事が好きだったんだよ。だから随分落ち込んだし…あんたには嫉妬したなぁ」

「梨絵…」

「おまけに事故に遭って死んじゃうし…もー最低!でも…心残りはないの。あれは事故だったんだから…仕方が無いことなんだよ」


自分を納得させるように何度も頷く梨絵を見て、私は思い出したように続けた。






「碧は梨絵が死んだのは自分のせいだって言ってた…俺が梨絵を振ったからって…」


私にはあんまり言わないけど、ずっとこの事で自分を責めてると思う。







「知ってる…でもそれは違うよ」


梨絵は深く座っていたベンチから体を少し起こすと、私の方に首を向けて真っ直ぐ見つめて来た。






「あの日ね…夜にあんたの事呼び出すつもりだったのよ。それで碧の事が好きだって認めさせようと決めてたの」

「えっ…」


そうだったの…?






「碧に桜花の事が好きだって言われて私もさすがに吹っ切れたのよね。だからスイミングの帰りにあんたの家に寄ってガツンと言ってやろうと思って、張り切ってプールに向かう途中に事故に遭ったってわけ…」


梨絵はずっとスイミングスクールに通っていた。プールに向かう途中に事故に遭ってたんだ…







「そっか…」

「だからさ~もう私の事で暗くなるのやめてよね!ここからあんた達を見てるとイライラすんのよ」
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