幼馴染みはイジワル課長
「ったく…」と言って腕と足を組み、イライラしたように貧乏ゆすりをする梨絵。

その態度も変わってない。


イライラするといつもこうしてた…

梨絵はわかりやすい性格だから、言葉も態度もはっきりしてる子…





「でももう私は碧に会うことはできないし…梨絵の気持ちを伝えることは無理だよ」


私は死んでしまったんだから、もう碧に会えない。

せっかく梨絵に会えたのに…代わりに碧とは会えなくなってしまった…






「…バカね。もしかして自分は死んだと思ってるの?」


梨絵のその言葉に「え?」と首を傾げた私。



私は死んだんでしょ…?

夜の川に落ちたんだから…





「勝手に決めつけちゃダメ。本当にそのままあの世行きになっちゃうわよ?」

「…どういうこと?」


梨絵はため息をつきながら、足を組み直して肩まである髪の毛をかき分けた。






「あんたは死んだわけじゃない…ただ生死の間にいるだけよ」


生死の…間………?



ということは…

私はまだ死んだわけじゃないの…


碧にまた会えるの…?







「友達をかばって自分が川に落っこちるなんて…相変わらず世話が焼けるわね。泳げないくせに正義感だけは強いんだから…」

「すいません…」



梨絵の言うことはご最もです。

なので否定はしません…







「自分が死んだって思い込んでる気持ちが強い人や、現実に戻りたくないと思ってると…魂が勝手にあの世に引かれて、助かり見込みがあるのに死んだりするのよ。だからここでずっと見張ってたの…あんたにまでこっちに来られたら困るからね」

「どうして…?」


私がそう問いかけると…梨絵は目を潤ませながら口を開いた。








「あんたが死んだら…碧は一人ぼっちになるでしょ」



梨絵の目から涙がこぼれ落ちる…

それを見た私も涙が溢れ出した。







「梨絵…私ね………実は碧と付き合ってるの…」


ずっと言いたかったこと。

ちゃんと梨絵に話したかった事実…


碧と一緒にいても、抱き合っている時も…いつもどこか梨絵が頭の中によぎって、申し訳ないと思う気持ちがあった。

「気にするな」って碧は言うに決まってるから、決して口にすることはなかったけど…



本人にちゃんと伝えられた…







「もちろん知ってるよ!超~ラブラブ…幼馴染みとしてキモイくらい」


小馬鹿にするように笑う梨絵に、私は恥ずかしくなりながら顔を隠した。

天国から梨絵に見られてるとなると…今までのことがめっちゃ恥ずかしい。






「でも嬉しい…2人が結ばれてくれて心から嬉しいの…」

「梨絵…」


にっこりと微笑む梨絵を見て、また涙が溢れ出した。





「絶対に幸せになってね!見守ってるから」

「ありがとう…ありがとう梨絵…」


ごめんね。

言うと怒るだろうから言わないけど…








「…!」


すると突然辺りがパァァと明るなり、ものすごい強い風が吹いてきた…
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