幼馴染みはイジワル課長

未来へ

社会復帰

「おはようございます」


久しぶりにスーツに袖を通して、電車を乗り継いでオフィスに出勤した私は数日前に退院。今日からまた社会人だ。






「澤村ちゃん！」

「桜花ちゃん！」


先輩の山川さんや、歩未ちゃんはもちろんたくさんの社員が私の周りに集まって来る。


無事に退院した私は、その数週間後に元気に仕事復帰することが出来た。

季節はいつの間にかかなり涼しくなっていて、秋をもうすぐ通り過ぎてしまうくらい…


入院している間、なんだかとても早く時間が過ぎてしまったみたいだ…

病院での入院生活はあんなに長く感じたのに、変な感じだな。






「大丈夫？急な体調不良で入院してたんでしょ？」

「ええ」


心配そうに言う山川さんに苦笑いをすると、近くにいた歩未ちゃんが顔を曇らせた。


会社にはあの事故の事は伏せていて、私は体調不良で入院したということになっている。

あまり大袈裟にしたくないということもあるけど、部長と歩未ちゃんの関係もバレてしまうことを遠ざける意味でもある。






「病み上がりなんだからあんまり無理しないでね」

「何かあったらいつでも言って」

「はい！ありがとうございます」


山川さんや他の先輩達が私にそう声をかけてくれたあと、それぞれのデスクに戻って行った。






「桜花ちゃんおかえり」


私は歩未ちゃんと一緒にデスクに行き、荷物を置いて椅子に腰をかけた。





「ただいま！」


私が笑顔を向けると、歩未ちゃんは表情を少し曇らせた。





「桜花ちゃんが復帰出来て良かった…本当にごめんね。私のせいでこんなに仕事休ませちゃって…」


いつも元気な歩未ちゃんなのに、最近そんな姿が全体見れていない。


私に会うたびに暗い顔をして、いつも申し訳なさそうに謝る…その繰り返し。

仕方が無いことかもしれないけど…もう前みたいな関係に戻りたいな。








「歩未ちゃん。今日の夜空いてる？」


私はデスクに肘をつきながら、歩未ちゃんに聞いた。





「うん…空いてるよ」

「なら飲みに行こうよ♪久々にさ！」


私のその提案に、歩未ちゃんは少しだけ口元が緩む。しかしすぐに心配そうな顔をした。





「病み上がりなのにお酒飲んで大丈夫…？」

「大丈夫大丈夫！ずっと飲んでないから飲みたいのよっ」


入院中は味の薄いご飯食べて、早寝早起きして規則正しい生活だったから…

味の濃ーいつまみとアルコールを浴びたいのよっ！


それに…歩未ちゃんともちゃんと話さないといけないしね…







「…わかった。でも無理しないでね」

「うん！」


私と歩未ちゃんが飲みに行く約束をしたら…オフィスの入り口からちょうど碧と部長が出勤してきた。

それを見た私は…碧との打ち合わせを思い出して、すぐにデスクから立ち上がり碧と部長に小走りで近づいた。






「部長、課長！おはようございますっ」


なるべく自然に笑いながら2人に話しかけると、部長と碧は立ち止まる。





「…澤村。おかえり…体調はもういいのか？」


先に口を開いたのは部長で、私を心配そうに見つめて言う。





「はい！もう大丈夫です！ご心配おかけしました」

「無理しないで今日からまた頑張ってくれ」

「はい！」


胸を張って返事をすると、部長の隣にいる碧が口を開いた。





「病み上がりだからって甘えるなよ。仕事復帰した限りは仕事はきちんとこなせ」

「…はい」


私は背筋をピンと伸ばして返事をすると、2人は私の通り過ぎて行った。

ふぅと息を吐いた後デスクに戻ると、隣の歩未ちゃんがヒソヒソと話しかけてくる。