幼馴染みはイジワル課長

「仕事キツイか？」

「え？」


碧の表情はなんだか申し訳なさそうな顔で、課長の時のあの怖い顔とは全く別の物だった。




「どちらかというと…キツイ…かもしれないです。私…仕事出来ないから余計に…」

「まあ仕事出来ないのは事実だよな」


その碧の言葉にムッと膨れる私を見て、碧は一瞬微笑んだあとまた真剣な顔をする。





「そうじゃなくて…俺とパートナーになるのがキツイかって事」

「…そ、そんなことっ」

「正直に言えよ。いや言わなくてもわかってる…俺と組んでからお前が仕事に対し てもっときつくなってるってことは…」


碧…どうしてそんなこと言うの…？




「確かにキツイ時もあります。派遣から正社員になって本当に仕事って大変なんだなって思ったし…課長は厳しい人だけど…それは仕事だけで…それに課長と一緒に働くようになってからなんとなく成長出来た所もあるんです」


そうだよ。キツイことばかりじゃない…ちゃんと学ぶ所はたくさんあるんだから…

私のその言葉に碧は少し安心したようにふうと息を吐いた。




「ありがとう。そんなふうに思ってくれて嬉しいよ」

「本当にそう思ってますよ」


今日の外回りで碧を見ていてわかったの。碧は何だかんだ言って私に優しくしてくれる。だから自分とパートナーになった事をマイナスみたいに言わないで欲しい…





「俺は自分を仕事人間だと思ってる。今の仕事はやりがいがあるし、色んな人に頼られて責任もあるから甘えてばかりいられない。だから自然に周りにも厳しくなるんだよ。課長の立場だし余計にな」


碧は続けた。私は碧の横顔を見ながら黙って話を聞いていた。




「仕事がうまくいくなら上司や部下にどう思われたって構わない。そんなのもう慣れたしいちいち気にしてない。でもお前だけは別だ…」

「え…」

「お前に対してだけは…厳しい事を言う反面…お前が俺のことをどう受け止めてるのか気になる…仕事も手に付かないくらい…」


碧…そんなふうに思ってくれてたの…？

私のことさり気なく気にかけてくれてたんだ…すごく嬉しい。




「だからもう少し仕事のミス減らせ。俺になるべく怒られないようにしろ。仕事でお前がへましたら俺は怒らなくちゃいけない立場なんだぞ」

「は、はーい…」


そっか…そういう理由でもあるのね。改めて仕事頑張らないと！




「これから俺が仕事でお前に厳しいこと言ってもなるべく受け流して欲しい。じゃないと俺が仕事に集中出来ないから」

「うん…わかった」


そんな簡単にそう思えるかな…？仕事ってわかってはいても碧に怒られるとやっぱりへこむんだよね…






「全部お前の為に怒ってるだけだから。それだけだよ…」

「………」


最後に言った碧のその言葉は本気で嬉しかった。一生懸命頑張ろうって思った…



私の為に怒ってくれてる…碧の為に…