幼馴染みはイジワル課長
「不思議だなぁ…好きな人くらい普通いるでしょ?」

「…」


口を尖らせて言う歩未ちゃんに私は返す言葉が見つからず、マグカップを洗剤の泡で見えなくなるくらいまでスポンジで洗った。




私は碧の事が好き。

子供の時からずっと…

でも、好きでいちゃいけないんだ。

だって私の親友が碧の事が好きなんだから…





「桜花ちゃんに早く彼氏が出来るといいなーイケメンの♪」


ニコッと微笑む歩未ちゃんに、私はぎこちないけれど笑顔を返した。




彼氏なんて出来ないよ。碧の事が今でも好きなんだもん…

でもどうしようも出来ない…

親友を裏切れない。





「…ん?部長からLINEだ。だから仕事中はするなっての!」


作業を一度中断した歩未ちゃんは、ポケットからスマホを出してLINEをしていた。

私は手を止める事なく考えるのは碧と親友の事…




親友の名前は梨絵(りえ)。私と同級生。

彼女も幼い頃から碧の事が好きだった…


私達3人は近所に住んでいて親同士も仲が良く家族のような存在だった。同い歳の私と梨絵に少し年上のお兄ちゃんの碧。

子供ながらに本気で碧が好きだった。私も梨絵も…将来は碧のお嫁さんになるのが夢だったのに…

高校に入学する数日前梨絵が交通事故で亡くなった。

そこから私の幼馴染みは1人なってしまった…



梨絵が亡くなった事で私は自分の気持ちに鍵をかけ、碧を避けるような生活を送り早いものでもう25歳。

数日前まで派遣の仕事をして、今はやっと正社員になったけど…好きだけどずっと避けてきた人が今私の上司になってしまった。



本当に歩未ちゃんが羨ましい…

不倫はいけないことだけど私もあんなふうに恋がしたい。だけど…碧以外の人は今は考えられない。
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