幼馴染みはイジワル課長
人通りが少ない住宅街に私と碧の笑い声が響いて…まるでそれが合図のように私達は子供みたいにはしゃいだ。

碧を追いかける私と私から逃げる碧。お互いスーツ姿な事に気付いて途中で笑ってしまったりした…


このまま時間が止まればいいのに…

今は私達は上司と部下でもなくて親友を亡くした過去も今は忘れ、私と碧はただの幼馴染みだった。






「結構遅くなっちゃったな。おばちゃん心配してるんじゃないか?」


しばらくはしゃいだ後、碧が自分の腕時計を見て言った。




「ああ大丈夫。今日うちの両親出かけてていないの」

「え?そうなのか?」

「うん。温泉行ってて明後日の夕方に帰って来るの。だから今夜は一人で好き勝手できるんだよね♪」


親がいない週末なんてなんて開放感なんだろう♪うちの両親はお互い小うるさいタイプではないけどたまには私も一人でいたい日もある。





「そう言う事は早く言え」

「ごめん…忘れてたよ」


碧と飲みに行けるのが嬉しくて、両親の事なんて全く頭になかったです。




「家に一人きりなんて…心配だな」


立ち止まって考え込む碧はあごの辺りを指で触っている。これは碧の癖で、昔から考え事をしている時や何かに集中している時によくやっていた。




「大丈夫だよ。ちゃんと戸締りするし」

「でもな…さっきも言ったが最近は物騒だし」


碧が私の事を心配してくれるのはちょっと嬉しいな…ううん、かなり嬉しい。





「本当に大丈夫だよ」

「泊まってやろうか?」

「へ…?」


今なんて言った…?





「今夜泊まってやるっつてんだよ」

「ええ!い、いいよっ!いや!いいっていうのは嫌ってことじゃなくて…その悪いし…」


思わぬ展開に戸惑いうまく話せなくなってしまう。おまけに顔も赤くなり必要以上に手や顔を動かしている私。





「悪いとかそういう問題じゃない。何かあってからじゃ遅い。お前を1人家に残して帰っても俺は心配で眠れないんだよ」

「う……」


こんな事言われたら断れないよ。でも…碧が家に泊まるなんて…そんなの緊張して無理!

それこそ眠れないしすっぴんにだってなれないし!絶対にリラックなんて出来ない。





「…着替えとかどうするの?」

「おじさんの貸してくれ」

「…わかった」


どうしよう…

どうしよう…

どうしよう…!



今から碧が家に来るよっ!!!こんな展開全然予想してなかったから心の準備がまだ出来てない。





「先に言っとくけどお前を襲うなんてことは絶対ないから安心しろ」

「なっ……!わ、わかってるよそんなことっ」


いちいち言わなくていいっての!女として見られてない事はわかってるけど改めて言われるとちょっとへこむなぁ…





「そうと決まれば行くぞ…」

「あ、うん」


急に私達の空気が変わった。子供の頃に戻ったような空気から今はキリキリと張り詰めたような緊張感が漂っている…




「む、昔はよくお互いの家に泊まったりしてたよねっ」


緊張をほぐそうと明るい口調で昔話なんか適当に話題をふってみる私。





「そうだな。お前と梨絵が夏休みとか俺んちに来たりしてなよな」

「そうそう!3人で寝たりしたよね」


懐かしいなぁ。碧を真ん中にして3人で川の字になって寝たっけ…





「風呂も一緒に入ったよな」

「そうだっけ?」


それは覚えてないな…頭の中に人欠片も記憶にない。




「入ったよ。梨絵は恥ずかしいからって自分んちの風呂に入りに行ったけどお前は俺と平気で風呂に入ってたよ」

「…嘘。それ何歳の時だろ…」

「お前が5歳くらいかな」


5歳ってことは碧が10歳の時か。






「その頃からもう羞恥心があった梨絵に比べて、お前はそういうの全くなかったよな。平気で俺の前で着替えとかしてたし」

「5歳の時の話でしょ!?」


碧の前で着替えとかもしてたんだ私…その時から碧の事好きだったはずだけどまだ恥を知らなかったのか。
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