幼馴染みはイジワル課長
こんなに些細なことなのにドキドキしてしまう私って…なんかもう病気なんじゃないかって思えてくる。


もし碧を諦めたとして…この先碧を越えるような人は現れるのかな…今私が碧を想ってる気持ちと同じくらい好きになれる人はできるの?






「実家には帰れてないけどお袋とはたまに連絡取ってるよ」

「そっか…お父さんは相変わらず忙しいの?」


碧のお父さんは外資系の会社に務めていて、昔からよく海外出張が多くいつも忙しくしている印象。




「まあな。たまにお袋から連絡来たついでに話したりするけど…『早く結婚しろ』ってうるさいよ」

「ふーん…」


『結婚』と碧が言うと妙に気持ちが沈むな…碧が誰かの物になっちゃうなんてたとえ想像でも考えたくないよ。




「結婚なんて…今は考えられないな。精神的にも体力的にもそんな事を考える余裕はない」

「でもいずれはするでしょ…?」


「有り得ない」と言い張る碧に私はボソッと言うと、碧は少し間をあけたあとそっと口を開く。




「…お前だってそうだろ」

「…っ」


私よりも少し先を歩く碧はそう言って立ち止まり、後ろを振り向かずに前を向いたままだった。私も足を止め碧の背中を見つめていた目をそっと地面に移す…




「私はしない…結婚なんてしない」


本当に私は子供だ。いつまでたっても子供…こんな私をもらってくれる人なんて一生いないだろう…




「なら俺もしない」

「え…」


碧はこっちを振り返って言った。薄暗くて碧の表情までは見えなかったが声だけははっきりと聞こえた。



『なら』ってどういう意味だろう…聞きたいけど…怖くて聞けない。

自分から結婚の話をふくらませたのに私って本当に勝手だな…





「それに…お前みたいなドジを貰ってくれる男なんていないだろ」

「う、うるさいな!そんなことわかってるもんっ」


歩き出す碧を追いかけながらからかってくる碧に反論する。そしてまた碧と並んで歩き始めた。




「碧は…結婚してくれる人はいっぱいいそうだね。逆プロポーズとかされちゃうかも」

「なんだそれ。そんな奴いる訳ないだろ」

「いるよ絶対!碧は昔から超モテるじゃん」


学生時代もかなりモテていたことは知ってるし、会社でも部署関係なくダントツだよ。




「まあ好意を持たれた事はないでもないけど…」

「ほらね」


告白なんかたくさんされてるでしょ?わかってるんだから!




「本当の俺を知りもしない奴から好意を持たれてもな…」


碧は空を見上げながら難しい顔をして言う。




「自分の事も相手の事もちゃんと知らないと俺は無理。外見やノリに任せた恋愛は向かないな…そもそも恋愛自体苦手なんだ…」

「碧は仕事は完璧だけどそっち方面はダメなんだね…」

「うん。それに簡単に人を好きになれないんだよ。もっと単純になれたら楽なのにな…そうすれば…」

「碧…?」


見上げている顔を徐々に下に降ろす碧の表情が曇り、私は碧の顔を覗き込んだ。





「なんでもない…」

「痛っ!」


突然私のおでこをデコピンする碧は、痛がる私を見てケラケラ笑っていた。
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