危険なお見合い
過去の汚点
優理香18才の時の出来事だった。


「きゃあ!、いやぁぁああ!!やめて、誰かぁ!お姉ちゃん、助けて!お姉ちゃん!!」


「かわいい顔して、よく言うもんだな。
うちの凌太から何もかも奪っておいて、お上品面されてもしょうがないんだよ。

奪うものを奪ったのなら、あんたの子どもを与えてやるよ。
そして、子どもといっしょに俺に返してもらうんだ。ふふふははは。」


「いやぁ!私はあんたなんか知らない!
凌太なんて知らない!・・・お姉ちゃんっ!助けてぇーーー!」


上半身裸にされて外に逃げることもできずに、優理香は姉に助けを求めたが姉の反応などそこにはなかった。

涙を流しながら、意識も飛びそうになった優理香に若い男の声がした。



「兄さん!、ち、違うんだ。その子じゃない。
その子は何も知らない・・・彼女の妹だ!
僕たち兄弟のことなんて、ぜんぜん知らないんだよ。

彼女はまだ高校生で、家のことも何も知らない!」



「なんだと?おまえからすべてを奪った女はこいつじゃないのか?」


「違うよ!優理ちゃんごめん、何も知らないのに・・・かわいそうに・・・ほんとにごめん。」


「なんてことだ。すまない・・・。」


優理香は破れた服を拾って胸を押さえたまま、家まで逃げ帰っていった。



「兄さん、彼女に謝って!
俺とつきあっていた彩加(さやか)はとっくに東京へ行ってしまったんだ。」


「なんだと!泥棒ネコはもういないっていうのか・・・。くそっ。」





そして時は流れて・・・優理香は27才になった春のこと。



「それが優理香さん18才のときの僕の大失敗です。
いえ、犯罪です。

自首しようとしました。
でも、僕は家業を継いだばかりで、みんなに止められてしまったんです。

親父が亡くなって間がなかったから、どうかしてた・・・。焦っていたんです。


無理に裁判にしても、強姦未遂ですから被害者側もつらい目にあうってことで、彼女には忘れてもらう方がいいのかな・・・って思ってきました。

けれど、最近になって優理香さんの経歴を書いてある本を読みまして・・・僕はショックを受けました。


男性と付き合ってもすぐに別れてしまう。男性は怖い生き物だ・・・って。
すべて僕の心ない行動のせいなんです。」



「ホテルタナサキはどうするつもりなの?」


「弟に渡してきました。僕はレイプ犯として捕まってもいい覚悟です。」


「そこまで決心しておられるなら、このお見合いやってみましょう。
でも約束してください、優理ちゃんを追い詰めるようなことだけはやめてください。」


「はい、それは絶対しません。
約束します。とにかく、彼女には許しを請いたいと思っています。」
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