run and hide


「・・・翔子は・・・大切な友達だった、けど・・・」

 正輝は途方にくれたように立ったままで、困った顔をしていた。


 ・・・けど?

 ・・・・けーどーおおおおお????


 私は正輝をじっと見詰める。

 心臓がいきなり存在を主張しだした。どくどくと鳴り響き、耳の中でうるさい。

 使えなくなった耳の代わりに全身を聴覚にしていた。

 正輝が困った顔のままで、ぼそっと呟く。

「・・・・さっき、女として見てしまった」


 おおおおおお~!!!


 外見には絶対判らないだろうけど、私の中ではファンファーレが鳴り響き、紙ふぶきが舞い、盛大な拍手が聞こえて、大変騒がしかった。

 一気に上昇した体温と血圧にくらくらする。

「・・・えっと・・・」

 言葉にならず、日本語を忘れてしまったみたいに私は恐る恐る口を開いた。

 正輝は顔をあげて私を見た。決心したような強い目で。

「お前を恋愛対象の女性として見てしまって、今ちょっと混乱してる。だから今日は帰る。このままここに居たら、手を出さない自信がない」


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