run and hide


 色々舞台設定も考えてあった。この4年間。

 もし、正輝とキス出来るなら、こんな状況がいい、とか、こんな服装で、とか。

 だけどだけど、現実に私のその可愛い夢が叶った今、私は寝起きのスッピンで、よれよれの部屋着で、髪の毛は寝癖が付いていて、顔には多分枕の跡もついているはずだ。下手したら、ヨダレの跡も。

 でも、これが現実。

 この世の中の全てのことは、まさしくタイミングの一言に尽きるのかもしれない。

 ゆっくりと唇を押し付けて、正輝が笑う。私を抱きしめて、あはははと笑った。

 そして言った。

 こんな所に落ちてたんだって。大事なものって、本当に気付かないものだなって。ずっと横にいたのになって。

 私は正輝の肩に顔をうずめながら、目を潤ませていた。

 神様。

 居たんだ、ちゃんと。

 ごめんなさい、数々の暴言、お許しください。

 そしてどうか仕返しは企まないで下さい。

 伏してお願い申し上げます。

 逃げると追いかける。それは大変しんどかった。だけどこれで不毛な腐れ縁も終わり。これからは、ピンクにドットのカラフルリボンで結ばれた二人になるんだ。

 瞳を潤ませたまま、私も笑う。

 狭いシングルベッドの上で、気が済むまで私達は笑いあった。

 もう季節は夏の始め、暑い空気に負けない勢いで、私のハートも熱く熱く燃えていたんだった。


 これからも、隣で笑える。



 そして今度からは・・・・


 手も繋げるんだ。






 「run and hide」終わり。

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