此音忌譚 ―コノオトキタン―



「……そういう云い方……」



 傷付きます、と皆まで云わせずに。

 手近な卓子を叩いて、珊瑚は捲くし立てる。



「で、今日のあの女の人は、何故、死ななかったの?

 心の臓の鼓動を奪われたのに」



 つい、と卓子に両手を着き、身を乗り出してくるその髪を撫でて、主は溜息を吐く。

 細い猫毛はひどく魅惑的で、空腹感が、微かに胃の腑を焼いていた。



< 48 / 61 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop